「お店に行くたびに在庫がないと言われるけれど、本当なのだろうか」 「バーキンを買うためには、要らない商品も買わなければならないって本当?」
エルメスに憧れて店舗に通い始めたものの、いつまで経っても希望のバッグを紹介してもらえず、このような疑念や徒労感を抱えている方は非常に多いのではないでしょうか。SNS上では「エルパト(エルメス・パトロール)」という言葉が定着していますが、その実態は決して甘いものではありません。
この記事では、エルメス界隈で長年囁かれている「抱き合わせ商法」の噂について、米国での訴訟事例などに基づいた実態を徹底解説します。
なぜこれほどまでに購入が難しいのか、店員の「在庫がない」という言葉の裏には何があるのか。この記事を読むことで、暗黙のルールの正体を知り、今後どのようにエルメスと付き合っていくべきか、あるいはすっぱりと諦めるべきかの判断基準が得られるはずです。
エルメスの抱き合わせとは違法?「暗黙のルール」化する商法の実態

エルメスにおける「抱き合わせ」とは、人気の高いバッグ(バーキンやケリーなど)を購入する権利を得るために、その他の商品(プレタポルテ、ジュエリー、ホーム用品など)の購入を暗に求められる状況を指します。
公式には否定されているこの行為ですが、実態はどうなのでしょうか。まずは法的な側面と、現場で起きているリアルな状況から紐解いていきます。
- ハイブランド特有の商法?米国では訴訟問題に発展した背景
- 「在庫がない」は嘘つき?店員が隠す本音とバックヤードの謎
- あほらしい・めんどくさいと感じて「エルパト」を辞める人が続出
ハイブランド特有の商法?米国では訴訟問題に発展した背景
「欲しい商品を売る条件として、別の商品の購入を強制する」という行為は、一般的に「抱き合わせ販売(タイイング)」と呼ばれ、多くの国で独占禁止法に抵触する可能性があります。
これまであくまで「噂」や「都市伝説」として語られてきたこの問題ですが、2024年3月、ついに米国カリフォルニア州で集団訴訟が起きたことで世界中に衝撃が走りました。原告側の主張は、「エルメスはバーキンという圧倒的な商品力を利用し、顧客に対して靴やスカーフ、家具などの周辺商品の購入を不当に強要している」というものです。
参考:Hermès sued in California over claims it only sells Birkins to ‘worthy’ customers | The Guardian
この訴訟が注目されている理由は、以下の点にあります。
- バーキンは店頭に陳列されておらず、選ばれた顧客しか見ることができない
- その「選ばれる基準」が、過去の購入履歴(実績)に依存している
- 販売員がバッグ以外のカテゴリー商品を売ることで、高いコミッションを得られる構造があるという指摘
もちろん、ブランド側は「そのような事実はない」と反論していますが、火のない所に煙は立ちません。このニュースは、長年エルパトを続けてきた多くの顧客にとって、「やはり自分の感覚は間違っていなかったのだ」という確信に変わる出来事でした。日本ではまだ表立った訴訟にはなっていませんが、商法の構造自体は世界共通であると考えるのが自然でしょう。
「在庫がない」は嘘つき?店員が隠す本音とバックヤードの謎
店舗で在庫確認をお願いした際、店員がバックヤードに入っていき、数分後に「申し訳ございません、本日は在庫がございません」と戻ってくる。エルパト経験者なら誰もが経験するこのシーンですが、多くの人が抱く疑問は「本当に在庫がないのか?」という点です。
結論から言えば、この「在庫がない」には2つの意味が含まれています。
- 物理的に本当に入荷がない場合
- 物理的には存在するが、あなたに紹介できる在庫(枠)ではない場合
店員の言葉が嘘か本当かを見極めるのは非常に困難です。なぜなら、エルメスの人気バッグはフリー(誰でも買える在庫)として店頭に出ることは極めて稀だからです。バックヤードにバーキンがあったとしても、それは「すでに顧客がついている取り置き品」か、あるいは「これから太客(たくさんお金を使ってくれる顧客)に紹介するために確保してある在庫」である可能性が高いのです。
店員の本音としては、一見客や実績の少ない客に貴重なバッグを渡すメリットはほとんどありません。彼らも販売目標を持つ会社員である以上、今後も長く、広く(服や食器まで)商品を買ってくれる見込みのある顧客を優遇するのは、ビジネスとして合理的な判断と言えます。
つまり、「在庫確認に行ってきます」というアクションは、一種のパフォーマンスである場合も少なくありません。その間に顧客の購入履歴データを照会し、紹介に値する実績があるかを確認しているケースもあると言われています。
参考記事:エルメスの暗黙のルールとは?入店拒否されない服装と購入の秘訣
あほらしい・めんどくさいと感じて「エルパト」を辞める人が続出
このような実態が広く知られるようになるにつれ、エルメスでの買い物に対して「あほらしい」「めんどくさい」と感じて離脱する人が増えています。
- 自分が本当に欲しいわけではない高額な皿や服を買わなければならない
- 店員に媚びを売り、機嫌を伺うようなコミュニケーションに疲れた
- いつ買えるかわからないゴールが見えないマラソンにお金を使い続ける恐怖
特に、SNSで見かける「担当さんからご紹介いただきました」というキラキラした投稿と、塩対応される自分とのギャップに苦しみ、精神的に疲弊してしまうケースが後を絶ちません。
「お客様は神様」という日本の従来のサービス業の感覚で店舗に行くと、エルメスの(特に人気店における)接客スタイルはプライドを傷つけられるものに映ることもあります。自分の時間と資金を投じてまで、店員の顔色を伺うことに疑問を感じ始めた時が、エルパトの辞め時なのかもしれません。
参考記事:ブランド物が恥ずかしいと感じる心理と向き合う方法|ショップで恥をかかないためのマナーと心構え
エルメスの抱き合わせとは「実績」への課金!バーキンやピコタンの入手難易度

では、実際に希望のバッグを手に入れるためには、どれくらいの「実績(課金)」が必要なのでしょうか。ここからは、エルメスフリークの間で常識となりつつある数字の目安や、比較的入手しやすいと言われるモデルの真実について解説します。
- バーキンを紹介してもらう条件は「定価の1.5倍」購入?
- ピコタンなら抱き合わせなしで買える?甘くない現実
- 見栄っ張り合戦に疲れたら…賢い付き合い方と引き際
- 【総括】エルメスの抱き合わせとは「ブランドへの忠誠心」を試す試金石
バーキンを紹介してもらう条件は「定価の1.5倍」購入?
「実績」とは、その店舗や担当者から過去にどれだけ商品を購入したかという履歴のことです。そして、バーキンやケリーといった超人気バッグを紹介してもらうための目安として、まことしやかに囁かれているのが「1:1」あるいは「1:1.5」の法則です。
これは、「欲しいバッグの定価と同額、もしくは1.5倍の金額を、その他の商品で使う必要がある」という説です。
例えば、150万円のバーキンが欲しい場合、事前に150万円〜200万円程度の買い物をしていなければ、バックヤードから在庫が出てこないという計算になります。
さらに重要なのが、この実績としてカウントされる商品の「質」です。ただ金額を使えばいいわけではありません。
- 実績になりやすい商品: プレタポルテ(服)、シューズ、ファインジュエリー、時計、ホームコレクション(家具・食器)
- 実績になりにくい商品: 革小物(財布、カードケース)、ツイリー、コスメ
特に財布などの革小物は、バッグと同じ製造ラインのリソースを使うため、これらばかり買っても「バッグ購入へのプラス評価」にはなりにくいと言われています。ブランド側が売りたいと思っている「在庫が豊富なカテゴリー(服や食器)」を買ってくれる客こそが、真の優良顧客とみなされる傾向にあります。
参考記事:エルメスの結婚指輪で後悔?「ありえない」と言われる理由と真実
ピコタンなら抱き合わせなしで買える?甘くない現実
バーキンやケリーは無理でも、「ピコタンロック」や「ガーデンパーティ」なら、実績なしでも買えるのではないか。そう考える方は多いですが、現実はそれほど甘くありません。
確かに、バーキンに比べればピコタンは入荷数も多く、運が良ければ「フリー在庫」として店頭に並ぶこともあります。しかし、その競争率は凄まじいものがあります。
- 朝の開店待ち行列に並ぶ
- 一日に何度も店舗を巡回する
- オンラインストアの更新を四六時中監視する
これらを行うライバルが何百人といる中で、たまたま店舗に入ったタイミングでピコタンに出会える確率は、宝くじに当たるようなものです。
最近では、ピコタンであっても「実績のある顧客に優先的に回す」という傾向が強まっているという声も聞かれます。エントリーモデルと思われがちなピコタンですが、今や立派な「幻のバッグ」の一つであり、確実に手に入れるためには、やはりある程度の「他商品の購入(抱き合わせに近い形)」が近道となっているのが現状です。
見栄っ張り合戦に疲れたら…賢い付き合い方と引き際
ここまで読んで「やはりエルメスは自分には合わないかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。エルメスのバッグは確かに素晴らしい品質と資産価値を持っていますが、それを手に入れるために生活が苦しくなったり、精神を病んだりしては本末転倒です。
見栄っ張り合戦や実績作り競争に疲れた場合は、以下のような選択肢を検討してみるのも一つの賢い方法です。
- 二次流通(専門店)で購入する: 定価より高くはなりますが、抱き合わせ商品を買う総額を考えれば、実は専門店でプレ値(プレミアム価格)で買う方が安上がりで、精神的にも楽な場合があります。色やサイズも自由に選べます。
- 海外旅行のついでに狙う: 日本の店舗は特に「担当・実績」の縛りがきついと言われています。パリ本店は抽選予約制ですし、その他の国では日本より在庫状況が緩やかな場合もあります(ただし、2025年からは購入履歴の世界共有が進むため、この方法は以前より難しくなる可能性があります)。
- 本当に好きなものだけを買う: 「バッグのために」要らない皿を買うのではなく、純粋にスカーフが欲しい、靴が欲しいと思った時だけ店に行く。その結果、いつかバッグが出たらラッキー、というスタンスに切り替えると、気持ちが楽になります。
【総括】エルメスの抱き合わせとは「ブランドへの忠誠心」を試す試金石
今回の記事では、キーワードである「エルメスの抱き合わせとは」について、違法性の議論から現場のリアルな事情までを解説してきました。
結論として、エルメスにおける抱き合わせのような商法は、法的にグレーな部分を含みつつも、ブランド価値を維持するための「フィルター」として機能してしまっているのが現実です。
- 単にお金を持っているだけでなく、ブランドの世界観すべて(服も、暮らしも)を愛してくれる顧客を選別するシステム。
- 「在庫がない」は、そのフィルターを通過していない顧客への定型句。
- 実績作りが面倒だと感じるならば、二次流通の利用や撤退も賢い選択。
エルメスのバッグは魅力的ですが、それに振り回されて自分を見失わないことが何より大切です。この「暗黙のルール」を理解した上で、自分自身が納得できる距離感でブランドと付き合っていくことをお勧めします。

コメント